病院の待ち時間が長いとクレームになる?時間削減とクレーム対策を解説
- 2024年9月5日
- 診療予約システム
患者が抱きがちな病院への不満として、「待ち時間の長さ」が挙げられます。診察が長引いたり、特定の時間帯に患者が集中したりすることで、待ち時間が発生し、クレームに発展するケースもあります。
患者の満足度を高めるには、待ち時間を軽減し、クレームを防ぐ必要があるでしょう。しかし、「どのような対策を取ればよいかわからない」「クレーム時の対応に困る」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、病院やクリニックの待ち時間によって生じるクレームについて、原因と対策を解説します。待ち時間解消のためのシステム導入についても説明していますので、参考にしてみてください。
病院の待ち時間と患者満足度の関係
待ち時間が長くなればなるほど、患者の不満は大きくなり、クレームに発展しやすくなります。それでは、どれくらいの待ち時間なら許容でき、またはクレームにつながってしまうのでしょうか。平均的な待ち時間や許容時間について紹介します。
平均的な病院の待ち時間は?
引用:令和2年受療行動調査(確定数)の概況│厚生労働省をもとに作成
厚生労働省の調査によると、最も多いのが「15分未満(28%)」であり、約7割が1時間未満の待ち時間となっていました。1時間を超えると、平均的には長い待ち時間であるといえるでしょう。
患者はどのくらいの時間なら待てる?
病院を対象にした調査では、患者が許容できる待ち時間の平均は以下の通りでした。
項目 |
許容時間 |
受付 |
18分 |
診察待ち |
37分 |
検査 |
23分 |
計算・会計 |
10分 |
病院滞在時間 |
68分 |
診察までに待てる平均時間は37分であり、この時間を超えると患者は不満を抱きやすくなるでしょう。また、受付や会計の許容時間はより短く、スムーズな対応が求められます。プロセスに応じて、待ち時間の意識を変えて対応する必要があるでしょう。
参考:待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査│日本医療マネジメント学会雑誌
待ち時間は不満につながりやすい?
来院患者が抱く病院への不満は、以下のような割合となっています。
引用:令和2年受療行動調査(確定数)の概況│厚生労働省をもとに作成
「診察までの待ち時間」の割合が多く、患者が不満を抱えやすいポイントだといえます。待ち時間の解消は、患者からのクレームを防ぐとともに、満足度を向上させ、他院との差別化をはかれるでしょう。
病院の待ち時間が長くなる原因
病院の待ち時間が長くなるのは、どのような原因からなのでしょうか。多くは、診察時間や予約の集中、問い合わせ、受付会計業務などが待ち時間の原因になりやすいと考えられます。
診察時間が長く遅れが生じている
- 時間をかけて丁寧に診察している
- 緊急性の高い急患を優先している
- 症状が多様で、診察時間が一定でない
- 診察後に検査や処置が必要
診察時間が長引き、受付から長い待ち時間が生じてしまうことが主な原因です。患者一人ひとりに対して丁寧に診察を行うと、待ち時間が長くなるのは避けられません。特に、高齢患者が多いとつい話し込んでしまうことが多いでしょう。
また、急患を優先したり、リスクの高い患者に時間をかけたりするなど、患者の症状や状態に合わせて診察順や時間が変動します。患者にとって時間が読みにくいため、「待たされている」という感覚に陥りやすくなるでしょう。
さらに、診察後に血液検査やCTなど検査、処置を受けるケースもあります。診察だけで終わらないと総合的な待ち時間が長くなってしまいます。
予約が多く、時間帯によりばらつきがある
- 予約患者数が多い
- 特定の時間帯に予約が集中してしまう
1日に対応できる患者数以上の予約がある場合、必然的に待ち時間は長くなってしまいます。予約のコントロールがうまくいかず、特定の日に患者が集中してしまっていることが原因でしょう。
また、特定の時間帯に予約や来院が集中し、待ち時間が長くなることもあります。特に、高齢患者が多いと、受付開始前から並んで順番を取る患者が多い傾向があり、診察待ちが集中しやすいでしょう。
スタッフが患者対応に追われている
- スタッフが電話や窓口対応に追われて受付や会計が遅れる
- ワクチン接種など流行期に増加する問い合わせに追われている
- スタッフの人員が不足している
- スタッフ間のコミュニケーション不足で効率化できていない
スタッフが患者対応に追われており、受付や会計などの診察以外のプロセスが遅れてしまうことも待ち時間の原因となります。特に、繁忙期や感染症の流行期に増える電話での問い合わせに対応していると、窓口業務まで手が回らなくなる恐れがあります。
また、そもそもスタッフの人員体制が原因の場合もあるでしょう。スタッフの人数が足りなかったり、コミュニケーション不足でうまく連携が取れていなかったりすると、業務が滞ってしまいます。
受付・会計業務が効率化されていない
- 受付や会計を全て手動で行っている
- システムトラブルが発生している
受付や会計業務が効率化されていないことも待ち時間の原因となります。患者を待たせているという焦りから、早く処理しようとするとミスが生じる可能性もあります。再来受付機や自動精算機などのツールを導入し、効率化を進めることも大切です。
また、システムトラブルが生じてしまい、業務が滞ってしまうケースもあります。トラブルが頻発したり、メーカーのサポートが十分でなかったりすると、トラブルが発生し、待ち時間が長くなる恐れがあるでしょう。
待ち時間によるクレームが発生したときの対応
「待ち時間が長い」というクレームが発生したときには、どのように対応すればよいのでしょうか。3つのプロセスから、対応のポイントを解説します。
1.待たせたことへの謝罪と不満の傾聴
まずは、待たせたことに対して謝罪をし、患者の不満を傾聴しましょう。「お待たせして申し訳ございません」「不安なお気持ちをお察しします」など言葉で共感し伝えることが大切です。
患者の不満を傾聴するときには、以下のポイントを意識すると大きなトラブルに発展しにくいでしょう。
- 理屈っぽくならない
- 感情的にならず冷静に
- チームの一員として謝罪する
- 「貴重なご意見ありがとうございます」と感謝を示す
2.解決策や見通しの説明
謝罪する気持ちを十分に伝えた上で、解決策や時間の見通しについて説明します。「○○時であれば比較的空いております」「○○時に予約変更いたしましょうか」など別の時間帯を案内するとよいでしょう。
また、診察時間が遅れている原因が明確である場合は、率直に説明し、時間の見通しを伝えると患者の安心につながるでしょう。
3.対策とクレーム内容の共有
最後に、クレーム内容を誠実に受け止めて、院内で共有し、改善に努めることを伝えます。そして、クレームがあったことを院内で共有します。報告書やミーティングなど、クレームが生じた場合の報告フローを院内で決めておきましょう。
また、院内で勉強会を開いて、クレーム内容を共有したり対応方法を学んだりすることも有効です。院内全体で再発防止に取り組み、改善できる点は積極的に見直していきましょう。
モンスターペイシェントには毅然とした対応を
スタッフが誠実に謝罪しても聞き入れない、長時間居座るなどの迷惑行為が生じる場合は、毅然とした対応も必要です。事務長や院長など管理者が、事実関係の確認を含めて冷静に対応します。
特に、迷惑行為が著しい「モンスターペイシェント」には注意が必要です。以下のような行動はカスタマーハラスメントに該当する可能性があり、毅然とした対応が求められます。
- 待合室でいらだって大声で怒鳴る、威嚇する
- クレームを付けて診察代を支払わない
- 悪い口コミを書くと脅す
他の患者に迷惑がかかったり、スタッフに危害が加えられたりする恐れがある場合、診療をお断りすることも検討しましょう。
医師に課せられている「応召義務(※)」を盾に、患者から診察拒否が不当だと主張される場合もあります。しかし、迷惑行為から応召義務違反となった裁判例はなく、信頼関係が構築できないことは、拒否する正当な理由に当たると考えられます。
迷惑行為が目立つ患者への処遇について、法的義務を含めて正しく理解しておきましょう。
※応召義務:医師法19条に規定されている、「正当な理由がなければ患者の診療を拒否してはならない」という義務。
待ち時間によるクレームを防ぐ対策
待ち時間によるクレームを防ぐことは、患者とのトラブル防止やスタッフのストレス軽減につながります。具体的には、どのように防止できるのでしょうか。
1.業務分担や人員配置を見直す
業務の分担や人員配置を見直し、業務効率が向上するような仕組みづくりを行いましょう。スタッフ同士で、業務分担や必要な確認事項の共有を明確にしておきます。何をすべきか明確にしておくことで、待ち時間の増大を防ぎやすくなるでしょう。
人員が不足している場合、人員体制を見直し、受付スタッフの増員も検討します。また、診察時カルテ入力を代行可能なドクターズクラークの採用も有効です。
2.待ち時間の負担軽減をはかる
患者の待ち時間の負担を軽減することも対策の一つです。以下のように、待っていてもストレスがかかりにくい環境や設備を整えるとよいでしょう。
- テレビやウォーターサーバー
- 書籍・雑誌、週刊誌
- 座り心地のよい椅子・ソファ
- Wi-Fi環境
- キッズスペース
また、待ち時間が生じた際のスタッフの応対も重要です。待ち時間に関する受付時の説明や、待たせたことへの謝罪をきちんと伝えるなど、丁寧な応対ができるとよいでしょう。
3.待ち時間を短縮するシステムを導入する
待ち時間自体を軽減する対策も重要です。以下のようなシステムを導入し、予約や受付、会計の効率化をはかりましょう。
- 診療予約システム:予約の効率化や平準化をはかる
- 問診システム:アプリなどで来院前に問診可能
- 自動精算機:会計の待ち時間を解消
待ち時間問題を解消する診療予約システムとは
待ち時間の解消には、診療予約システムを導入することもおすすめです。病院やクリニックでの予約管理を効率化し、待ち時間の短縮や負担軽減につながります。具体的なシステムの機能や導入するメリットについて紹介します。
診療予約システムの機能
- 予約管理(順番予約、時間帯予約など)
- オンライン予約(LINE連携、外部プラットフォームなど)
- Web、アプリでの診察状況の確認
- リマインダー通知
- 自動音声応答システム
診療予約システムは、患者がオンライン上で予約を取得でき、診察状況もWebやアプリで確認できます。
また、診察順が近づくと、LINEやメールなどで通知がくるリマインド機能もあるため、待合室で待つ必要がなくなります。待ち時間を有効に活用できるため、負担軽減になるでしょう。
さらに、電話対応に対して、自動音声で応答する「自動音声応答システム(IVR)」という追加機能もあります。業務を圧迫しやすい電話対応を自動化し、業務の効率化ができます。
導入するメリット
- 患者が混雑を避けて予約するため、待ち時間が軽減される
- 来院数のムラがなくなり、人員計画を立てやすい
- ミスやクレームを防止できる
診療予約システムを導入することで、患者が混雑を避けて予約するため、予約が均等化されます。特定時間の来院集中を防止でき、待ち時間の軽減につながります。来院数にムラがなくなり、人員計画も立てやすくなるでしょう。
また、予約がシステム上で一元管理できるため、ミスの防止にも効果的です。転記や入力のミスなどから予約漏れが生じると、患者を必要以上に待たせてしまいかねません。カルテと連携すれば、患者情報とともに予約が登録されるため、ミスを防げます。
診療予約システムの詳しい機能や導入上のポイントについては、以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:診療予約システム導入のポイントは?メリットや注意点、選び方を解説
待ち時間解消には診療予約システムを
待ち時間の長さは、多くの患者にとって不満につながります。許容時間を超えてしまうと、患者満足度は低下し、クレームに発展してしまう恐れがあります。
業務の効率化や過ごしやすい環境整備などの対策を行っても改善しない場合、予約システムの導入をした方がよいかもしれません。診療予約システムの導入により、特定の時間帯に来院が集中しにくくなり、待ち時間の軽減につながります。
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著者PROFILE
- 医療機器メーカー営業としてキャリアをスタートした後、医療ITベンチャーにて生活習慣病向けPHRサービスのプロダクトマーケティング責任者をはじめ、メルプWEB問診の事業責任者を経験。その後、診療予約システムやクリニック専用の自動精算機・自動釣銭機の商品の企画・開発を手がけ、現在は「医療を便利にわかりやすく」をミッションにスマートクリニックの社会実装に向け同事業の企画・推進を担当。
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