医療事務を効率化する5つの方法│何から始めるべき?【クリニック向け】
- 2025年9月18日
- 診療予約システム
「医療事務スタッフがまた辞めてしまった…」「スタッフがいつも忙しそうで業務が回らない…」
鳴り止まない電話や待たされて不満そうな患者、そして疲れた表情で残業するスタッフ。クリニックの実務を支える医療事務が疲弊すると、患者満足度の低下を招きかねません。
医療事務スタッフが疲弊する原因として挙げられるのが、業務の非効率さです。ただ、医療事務の効率化をしたいと思いつつも、何から始めればよいかわからない方も多いでしょう。
本記事では、医療事務の業務を効率化するための方法を5つ紹介します。ツールの導入から外部委託まで、さまざまな方法を紹介しますので、自院のニーズに合わせて選んでみてください。
医療事務の効率化が必要な理由とは?
医療事務は、クリニックの収益と患者満足度を支える役割があります。単なる受付や会計業務だけを担うわけではありません。医療事務の業務が滞ると、クリニック経営に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
例えば、レセプト業務にミスがあれば返戻が発生し、資金繰りの悪化につながります。受付対応が遅れれば、患者の待ち時間が長くなり、患者離れの原因にもなりかねません。煩雑な事務作業はスタッフの疲労を蓄積させ、ミスなど医療の質へ間接的なリスクを生むこともあるでしょう。
医療事務の業務を効率化する5つの方法
医療事務の業務効率化は、多角的なアプローチで実現できます。ITツールの導入から業務フローの見直し、外部サービス(BPO)の活用まで、選択肢はさまざまです。
医療事務の業務を効率化する方法としては、以下の5つがあります。
- RPAで定型業務を自動化する
- レセプト業務を正確かつ高速にする
- 予約・受付業務のフローを改善する
- 業務の標準化で属人化をなくす
- BPO(外部委託)を活用する
1.RPAで定型業務を自動化する
定型的な繰り返し作業を自動化することは、効率化の第一歩です。定型業務の自動化に適したシステムが、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)です。RPAはレセプト請求や受付管理、医療書類の作成などを自動化するもので、生産性の向上やヒューマンエラーの防止につながります。
例えば、レセプト請求においては、電子カルテから医師の記録や患者データを抽出し、データを自動的に作成できます。
一定のルールに沿って行う定型的な業務を自動化できるため、スタッフがより付加価値の高い業務に集中しやすくなるでしょう。
2.レセプト業務を正確かつ高速にする
クリニックの収益を左右するレセプト業務は、正確性とスピードが求められます。特に、人間の目視による点検作業は時間がかかり、ミスが発生しやすいでしょう。
レセプトの点検には、レセプトチェックソフトの導入が効果的です。複雑な算定ルールを自動でチェックし、請求漏れや病名漏れなどのミスを未然に防ぎます。
近年ではAIを搭載したソフトもあり、過去の査定事例を学習して返戻リスクを検知可能です。返戻率を大幅に下げ、キャッシュフローの改善が期待できます。
3.予約・受付業務のフローを改善する
ひっきりなしにかかってくる電話はスタッフの集中を妨げ、他の業務を中断させる要因です。予約や受付の業務フローを見直すことで、本来の業務に集中しやすくなります。
フローの改善に最適なのが診療予約システムです。24時間のWeb予約に対応すれば、診療時間内の電話対応を大幅に削減可能です。電子カルテとの連携もできるため、予約した患者情報が自動的に紐付き、管理の手間が省けるでしょう。
加えて、来院前に情報を入力するWeb問診や会計業務を自動化する自動精算機を導入すれば、窓口での待ち時間の短縮につながります。スタッフの負担と患者のストレスを同時に軽減できるでしょう。
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4.業務の標準化で属人化をなくす
「あの仕事は〇〇さんしかわからない」という業務の属人化は、担当者の不在時に業務が滞るリスクがあります。業務を標準化し、誰でも対応できる体制を整えることが重要です。
属人化防止に有効なのが、業務手順をまとめたマニュアルの作成です。ただし、Wordファイルなどでの作成は、更新が滞り形骸化することが多いでしょう。
そのため、クラウド上でリアルタイムに共同編集できるNotionなどのツールを使えば、最新の状態を保ちやすくなります。スクリーンショットや動画を埋め込むと、さらに分かりやすいマニュアルになるでしょう。
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5.BPO(外部委託)を活用する
全ての業務を院内で完結させる必要はありません。ノンコア業務と判断される作業は、外部の専門業者に委託するBPO(BusinessProcessOutsourcing)も有効な選択肢です。ノンコア業務とは、専門知識をあまり必要としない定型的で間接的な業務です。
外部委託できる業務の例として以下が挙げられます。
委託できる業務 |
具体的な説明 |
導入メリット |
レセプト請求 |
・レセプト作成 ・病名や算定漏れのチェック ・保険者への請求作業 |
・返戻率が低下しキャッシュフローが安定 ・スタッフの残業を削減 |
会計・記帳 |
・日々の売上管理や経費精算 ・給与計算 ・帳簿作成などの経理業務全般 |
・経理担当者の雇用コストを削減 ・経営状況を正確に把握可能 |
電話・予約受付 |
・診療時間内外の電話応対 ・予約の受付と変更 ・キャンセル対応 |
・スタッフが窓口業務に集中できる ・時間外の予約機会を逃さず増患に貢献 |
再診案内 |
・定期健診の案内 ・慢性疾患の経過観察の受診勧奨 ・治療中断者へのフォロー |
・患者のリピート率が向上 ・クリニックの収益確保 |
医療クラーク業務 |
・電子カルテの代行入力 ・診断書や紹介状の作成補助 |
・医師が診察に専念でき、診療の質が向上 ・事務作業が減り患者の待ち時間が短縮 |
健診データ入力 |
・健康診断の結果入力 ・Web問診の内容転記 ・紙媒体資料の電子化 |
・スタッフの単純な入力作業を削減 ・データの管理、分析が容易になる |
ノンコア業務を外部に委託することで、院内スタッフは患者対応などのコア業務に集中でき、クリニック全体の生産性向上につながります。
医療事務業務を効率化するためのポイント
ITツールの導入や業務改善は、計画なく進めると失敗に終わる可能性があります。「高機能すぎて使いこなせない」「現場の業務フローと合わない」といった事態を避けるためには、次の3つのポイントを重視しましょう。
- 導入ツールの費用対効果を可視化する
- 現場スタッフの不安に向き合う
- 段階的な導入で現場の混乱を防ぐ
1.導入ツールの費用対効果を可視化する
ITツールの投資で懸念されるのは、費用に見合う効果が得られるかという点です。具体的なシミュレーションで投資対効果(ROI)を可視化し、経済的な合理性を把握することが大切です。
例えば、月額3万円の診療予約システムとWeb問診システムを導入したケースを考えます。
項目 |
効果(月額) |
計算の内訳(参考) |
<収入・コスト削減> |
||
① 人件費削減効果 |
+ 30,000円 |
時給1,500円 × 20時間削減 |
② 収益回復効果(無断キャンセル防止) |
+ 17,500円 |
平均単価3,500円 × 5件防止 |
③ 増収効果(Web予約による新患増) |
+ 50,000円 |
新患単価10,000円 × 5名増 |
利益の合計 |
+ 97,500円 |
①+②+③ |
<支出> |
||
④ システム利用料 |
– 30,000円 |
|
<最終的な純利益> |
||
月間純利益 |
+ 67,500円 |
利益の合計 - 支出 |
上記のように具体的に試算することで、どのような費用対効果を得られるかが明確化されます。
2.現場スタッフの不安に向き合う
新しいシステムの導入には、現場スタッフからの心理的な抵抗が伴うことが多いでしょう。「今のやり方で問題ない」という思いや「新しいことを覚えるのが大変」という不安など、心理的な抵抗が背景にあります。
スタッフの心理的な抵抗を乗り越えるには、トップダウンの命令は逆効果です。まずスタッフの困りごとをヒアリングし、「現場の悩みを解決するためのツール」として導入目的を共有しましょう。
まずは意欲的なスタッフに試してもらい成功体験を共有するなど、丁寧なコミュニケーションと戦略的な巻き込みが成功の鍵です。
3.段階的な導入で現場の混乱を防ぐ
予算や人員が限られるクリニックでは、一度に全てのシステムを刷新するのはリスクが高いでしょう。効果が出やすく、現場の混乱が少ない領域から着手する「段階的導入」が賢明なアプローチといえます。
具体的には、「患者接点(外側)から院内業務(内側)へ」という流れが望ましいでしょう。まずは診療予約システムで、患者満足度とスタッフの負担軽減に直結する効果を実感します。診療予約システムの導入がうまくいけば、RPAやレセプトチェックソフトで内部業務を効率化し、最終的に基幹システムである電子カルテを刷新する、という流れが失敗しにくい進め方です。
患者接点の多い業務の効率化は、患者・スタッフ双方にメリットを感じやすく、キャンセル防止や待ち時間短縮など、比較的短期間での効果が出やすい施策です。
医療事務スタッフに「業務改善により自分たちの仕事が楽になる」という実感を育むことから始めると、モチベーションを保ちつつ導入できます。
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【クリニック向け】医療の業務改善を進めるステップと効率化ツールを紹介
医療事務の効率化は「予約業務」から│MEDICALPASSで解決
医療事務の効率化には、RPAやBPOにより定型的な業務を自動化・委託する方法から、予約や会計業務の効率化まで多くの方法があります。
効率化施策の中でも、始めやすく費用対効果を実感しやすいのが「予約業務」の改善です。診療予約システムを導入することで、医療事務スタッフの予約管理負担軽減につながります。
ヒーローイノベーションでは、医療専門の診療予約システム「MEDICALPASS」を提供しています。
患者がスマホからいつでも予約できる「24時間ネット予約」や、PC操作が苦手な方向けの「自動電話受付対応」で対応。紙の台帳で起こりがちなダブルブッキングは、クラウド上での一元管理によって防止可能です。
また、予約情報が電子カルテに自動連携されるため、受付での入力作業も削減されます。予約前日の自動リマインド通知は、患者のうっかり忘れを防ぎ、無断キャンセル率の低減に貢献するでしょう。
もし予約業務の効率化から始めたいとお考えなら、ぜひ一度「MEDICALPASS」にご相談ください。専門のコンサルタントが、貴院の課題解決をサポートします。
著者PROFILE

- スマートクリニック事業推進室長
- 医療機器メーカー営業としてキャリアをスタートした後、医療ITベンチャーにて生活習慣病向けPHRサービスのプロダクトマーケティング責任者をはじめ、メルプWEB問診の事業責任者を経験。その後、診療予約システムやクリニック専用の自動精算機・自動釣銭機の商品の企画・開発を手がけ、現在は「医療を便利にわかりやすく」をミッションにスマートクリニックの社会実装に向け同事業の企画・推進を担当。
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