医療接遇とは?基本5原則と言葉遣い、実践チェックリストを紹介
- 2025年11月14日
- 診療予約システム

「スタッフの対応が冷たいと口コミに書かれてしまった」「忙しくなると、どうしても受付の対応が雑になってしまう」
クリニックを運営する中で、このような悩みを抱える開業医の先生は少なくありません。医療技術には自信があっても、スタッフの接遇ひとつで患者の足が遠のいてしまうのは、経営者として頭の痛い問題です。
医療接遇の本質を理解し、個人の問題ではなく「医療安全のための技術」としてクリニック全体で取り組むことで、接遇の問題は解消できます。
この記事では、医療接遇の基本5原則から現場で使える実践的なチェックリスト、場面別の正しい言葉遣いまでを具体的に解説します。スタッフ教育指針や自院の接遇レベルを見直すための参考にしてください。
医療機関の接遇とは?接客との違い

医療接遇とは、患者が抱える不安や痛みに寄り添い心理的な安心感を提供するための医療機関に必要な応対スキルです。
医療接遇の重要性を理解するために、一般的な接客との違いや病院経営におけるメリットを解説します。
医療接遇と一般的な接客の違い
医療接遇と一般的な接客の違いは、接遇によって目指す目的です。
ホテルやレストランなどのサービス業では、顧客は楽しみや快適さなどの「プラスの価値」を求めるため、期待を超える演出が求められます。
一方、医療機関を訪れる患者は、痛みや不安といった「マイナスの心理状態」にあります。そのため、医療接遇の目的は、過剰な「おもてなし」ではなく、不快な思いをさせずに安心して治療を受けられる環境を提供することです。
また、患者を過剰に「お客様扱い」する必要はありません。医療は、患者と医療者が協力して病気を治していく協働作業だからです。専門家としての姿勢を持ちつつ患者を尊重し、対等な関係性の中で信頼を築くことが求められます。
病院経営における重要性とメリット
医療接遇の向上は、単に「評判の良いクリニック」につながるだけではありません。「医療安全」の観点からも大きな意味があります。
スタッフの態度が悪かったり高圧的だったりすると、患者は萎縮して本来伝えるべき情報を言い出せなくなるかもしれません。例えば、以下のようなコミュニケーション不足は、誤診や投薬ミスなどを引き起こすおそれがあります。
- 「本当は別の薬も飲んでいるけれど、言いにくいから黙っておこう」
- 「アレルギーがあるけれど、忙しそうだから伝えそびれてしまった」
医療接遇によって信頼関係が築かれていれば、患者は細かな体調の変化や懸念点を自発的に話してくれるようになります。
医療接遇のレベルを上げることは、医療ミスのリスクを減らし万が一トラブルが起きた際も訴訟などに発展するリスクを減らすメリットがあります。
医療接遇の基本5原則と実践のポイント

医療現場で求められる接遇には、基本となる「5原則」があります。スタッフ個人の性格や資質に任せるものではなく、組織として求められる「技術」として捉えることが大切です。
医療接遇に必要な、以下の基本5原則を紹介します。
- 身だしなみ
- 挨拶
- 表情・笑顔
- 態度
- 言葉遣い
1.身だしなみ:第一印象を決める大切な要素
医療スタッフにとっての身だしなみは、「清潔感」と「安全性」が重要です。清潔感は、患者に対して「この人なら安心して体を任せられる」というプロとしての信頼感を与えます。
具体的には以下の点に気をつけて、身だしなみを整えましょう。
- 爪:短く切りそろえられているか。長い爪や派手なネイルは、不潔な印象を与えるだけでなく、処置の際に患者を傷つけるリスクがある。
- 髪型:顔にかからないようまとめられているか。頻繁に髪を触る仕草は不衛生な印象を与えてしまう。
- ユニフォーム:汚れやシワはないか。足元(靴)の汚れも重要。
身だしなみは、医療スタッフの第一印象を形成する大切な要素です。対面してすぐによい印象を抱いてもらうことを目指しましょう。
2.挨拶:忙しくても患者に目線だけでも送る
挨拶は、「あなたの存在に気づいています」「歓迎しています」という意思表示です。
忙しい業務中であっても、患者とすれ違う際や受付に患者が立ったときには、作業の手を止めることがポイントです。
パソコン画面やカルテを見たままの「ながら挨拶」は、かえって冷たい印象を与えます。一瞬でも相手に目線を送り、明るいトーンで声をかけるだけで、患者の緊張は和らぎます。
3.表情・笑顔:目元の表情で安心感を与える
不安を抱えている患者にとって、スタッフの無表情は威圧感や拒絶として受け取られがちです。
とくに、医療現場ではマスクを着用することが多いため、口元の笑顔は見えにくくなります。そのため、目元の表情がより大切です。口角を上げると自然と目尻が下がり、優しい目元になります。マスクをしていても「目の笑顔」で穏やかさを伝えるよう意識しましょう。
ただし、深刻な病状の説明を受けている時や、痛みを訴えている時に笑みを浮かべるのは不適切です。場面に応じて、真剣な表情や心配そうな表情を使い分ける配慮も必要です。
4.態度:信頼を築く傾聴
患者の立場に立って傾聴する態度が、話しやすい雰囲気をつくり、信頼関係の基礎となります。不満やクレームが生じた際も、まずは遮らず傾聴することで二次的なトラブルを防げます。
具体的には、以下の3つを意識してみましょう。
- 体の向き:患者の方へ体(へそ)を向け、話を聞く姿勢を示す。
- 相槌:「ええ」「はい」などのうなずきやポジティブな言葉がけを適切なタイミングで挟む。
- 待つ姿勢:言葉が出にくい患者の話を遮らず、急かさずに最後まで聴くことを意識する。
腕組みやため息、貧乏ゆすりなどは、無意識であっても患者に不快感や不安を与えるため控えましょう。
5.言葉遣い:品格とわかりやすさ
尊敬語や謙譲語を適切に使い分けることは、患者への敬意を示し、クリニックの品格を保つための基本です。特に高齢の患者に対しては、正しい敬語を使うことで安心感や信頼感を与えられます。
また、専門用語を多用して患者を混乱させたり突き放したような言い方をしたりすることは避けましょう。相手の年齢や理解度に合わせ、誰にでも伝わる平易な言葉を選ぶことが、医療者としての責任ある態度といえます。
【場面別】医療接遇の正しい言葉遣い

医療接遇での正しい言葉遣いについて、3つの場面別に解説します。
- 医療事務スタッフの受付対応
- 高齢者や小児への説明
- 患者にお願いするときの「クッション言葉」
1.医療事務スタッフの受付対応
受付はクリニックの顔であり、最初と最後に患者と接する場所です。正しい言葉遣いとプライバシーに配慮した対応が、患者に安心感を与えます。以下のように、言葉遣いに気をつけて案内しましょう。
×「お座りになってお待ちください」→○「お掛けになってお待ちください」
解説:「お座り」は犬のしつけなどを連想させるため、人に対して使うのは失礼に当たります。
×「こちらが診察券になります」→○「こちらが診察券でございます」
解説:「~になります」は変化を表す言葉です(例:氷が水になります)。物が変化するわけではないので、「~でございます」が適切です。
×「お大事にどうぞ」→○「お大事になさってください」
解説:「どうぞ」は通常、文頭につけて勧める言葉です。文末は「なさってください」と言い切るのが丁寧です。
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2.高齢者や小児への説明
患者の中には、医療用語がわからない方も多くいます。特に高齢者や子どもに対しては、日常的な言葉にして伝える工夫が必要です。
【医療用語から日常用語への置き換え例】
- オペ→手術
- 悪寒(おかん)→寒気(さむけ)、ゾクゾクする感じ
- 頓服(とんぷく)→症状が出たときだけ飲む薬
- 食間(しょっかん)→食事と食事の間(食後約2時間のこと)※食事中と誤解されやすいので注意
- 既往歴(きおうれき)→今までにかかった病気
3.患者にお願いするときの「クッション言葉」
患者に何かを依頼したり、断ったりする際、いきなり用件を伝えると冷たい印象になります。以下のような「クッション言葉」を挟むことで、柔らかく表現できます。
【クッション言葉の例】
|
場面 |
クッション言葉 |
|
依頼するとき (保険証の提示など) |
・恐れ入りますが ・お手数ですが |
|
尋ねるとき (プライバシーに関わることなど) |
・差し支えなければ ・もしよろしければ |
|
断るとき・待たせるとき |
・あいにくですが ・大変申し訳ございませんが |
【ポイント】
何かを断る際は、クッション言葉に加えて「代替案」を提示すると納得が得られやすくなります。
例:「あいにく本日は予約がいっぱいです。明日でしたら午前中があいておりますが、いかがでしょうか?」
そのまま使える医療接遇チェックリスト【クリニック経営者向け】

スタッフが自身の接遇を振り返り、客観的に評価するためのチェックリストです。朝礼や研修資料としてご活用ください。
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カテゴリ |
チェック項目 |
|
身だしなみ |
□髪は顔にかからないよう整えられているか □爪は短く切り揃えられ、清潔か(派手なネイルはしていないか) □ユニフォームに汚れやシワはないか □靴のかかとは踏んでいないか、汚れはないか □名札は患者が見やすい位置についているか |
|
挨拶・表情 |
□患者と目が合った時、すぐに挨拶ができているか □マスクをしていても伝わるよう、目元で微笑んでいるか □作業の手を止め、患者の方を向いて挨拶しているか □場面に応じた適切な声のトーン・大きさか |
|
態度・動作 |
□患者の話を聞くとき、体ごと相手に向けているか □相槌を打ち、共感の姿勢を示しているか □腕組み、足組み、頬杖をしていないか □物の受け渡しは両手で丁寧に行っているか □患者の前で私語を慎んでいるか |
|
言葉遣い |
□正しい敬語(尊敬語・謙譲語・丁寧語)が使えているか □専門用語を使わず、わかりやすい言葉で説明しているか □クッション言葉を活用しているか □語尾まで明瞭に話しているか |
医療接遇の向上で選ばれるクリニックへ

優れた医療接遇は、患者の不安を解消し、信頼関係を深めるための有効な手段です。スタッフ一人ひとりがプロフェッショナルとしての自覚を持ち、丁寧な対応を心がけることで、患者満足度は確実に向上し、結果として増患や経営の安定につながります。
予約システムで「待たせない接遇」を
どれほど丁寧な言葉遣いで対応しても、患者を長時間待たせると満足度は下がってしまいます。「いつ呼ばれるかわからない待ち時間」は、患者にとってはストレスであり、クレームにつながりかねません。
接遇の根本的な改善には、スタッフの対応スキル向上と同時に、業務効率化による「待ち時間の短縮」が欠かせません。
ヒーローイノベーションが提供する「MEDICALPASS(メディカルパス)」などの診療予約システムを導入することで、予約管理を効率化し、待ち時間を可視化・短縮できます。システムによって業務負担が減れば、スタッフにも心の余裕が生まれ、より患者に寄り添った丁寧な接遇が可能になります。
「接遇改善」と「業務効率化」の両輪で、患者からもスタッフからも選ばれるクリニック作りを目指しましょう。予約システムの導入や活用についてのご相談も、ぜひお気軽にお寄せください。
著者PROFILE

- スマートクリニック事業推進室長
- 医療機器メーカー営業としてキャリアをスタートした後、医療ITベンチャーにて生活習慣病向けPHRサービスのプロダクトマーケティング責任者をはじめ、メルプWEB問診の事業責任者を経験。その後、診療予約システムやクリニック専用の自動精算機・自動釣銭機の商品の企画・開発を手がけ、現在は「医療を便利にわかりやすく」をミッションにスマートクリニックの社会実装に向け同事業の企画・推進を担当。
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