皮膚科の待ち時間が長いのはなぜ?改善方法やクレーム対応を解説
- 2025年8月22日
- 診療予約システム
「処置が必要なケースが多く患者を待たせてしまう…」「クレームやネガティブな口コミもある…」
来院患者数がどうしても多くなる皮膚科では、診察までの待ち時間が課題となりがちです。待ち時間が長くなると、患者満足度の低下やクレームの発生につながります。ただ、対策をした方がいいと思いつつも、何から手を付ければよいかわからない開業医の先生も多いのではないでしょうか。
本記事では、皮膚科の待ち時間が長い理由や改善方法、対策を成功させるポイントまでを解説します。待ち時間対策の実効性を高めるために、参考にしてみてください。
皮膚科の待ち時間が長いのはなぜ?3つの理由
待ち時間の問題は、単なる診療効率の悪さではなく、皮膚科が抱える構造的な課題が背景にあります。皮膚科の待ち時間が長い理由は、主に以下の3つが挙げられます。
- 慢性疾患や季節性疾患による患者数の増加
- 美容分野への医師流出で人材が不足
- 「3分診療」を招く診療報酬制度の問題
理由①:慢性疾患や季節性疾患による患者数の増加
アトピー皮膚炎などの慢性疾患や、花粉症などの季節性疾患により患者数が多くなりがちなことが、待ち時間が長い理由の一つです。
特に、アトピー皮膚炎の外来患者数は、以下のように年々増加傾向にあります。近年では、子どもだけでなく大人でも発症する「大人アトピー」も注目され、患者数を押し上げています。
参考:令和5年患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)│厚生労働省
また、花粉の飛散時期にはアトピー性皮膚炎が悪化したり、夏には汗疹が増えたりするなど、季節によって患者数が変動します。通常の人員体制では、一時的な患者増加に対応できず、来院した患者には「待ち時間が長い」という印象を与えてしまいます。
理由②:外科的処置により診療時間が予測しにくい
日常的な診療の中で、粉瘤の切除やほくろの除去などの外科的処置を頻繁に行います。外科的処置には10分から1時間程度を要することがあり、予約段階で予測しにくいものです。予定外の緊急性が高い処置が発生すると、診察順に遅れが生じ、待ち時間が増大してしまうこともあります。
理由③:「3分診療」を招く診療報酬制度の問題
日本の保険診療で採用されている「出来高払い制度」も、待ち時間の長さに影響しています。出来高払い制度では、診療行為ごとに点数が定められており、より多くの患者を診察する方が収益が上がります。
特に、皮膚科は視診中心の診断や慢性疾患の定期処方など、効率化できるポイントは数多いです。収益性を考えると、「できるだけ多くの患者を短い時間で診察する」という発想になりやすく、混雑しやすい状況が生まれてしまうのです。
患者が許容できる待ち時間は?
待ち時間と患者満足度を組み合わせた調査では、外来患者が許容できる待ち時間の平均は37分です。また、厚生労働省の調査では、外来患者の診察までの待ち時間は以下のように約半数が30分未満で、平均許容時間を下回っています。
- 15分未満:27.8%
- 15~30分未満:24.8%
つまり、約半数の病院は患者の許容待ち時間内にあるのです。こうした中、許容時間を超過して待ち時間が長くなると、患者からの信頼低下につながります。
例えば、Googleマップや口コミサイトで「あのクリニックはいつも待たされる」という評判が定着すると、新規患者を失うことになりかねません。
さらに、待ち時間が長いことによるクレーム対応は、受付スタッフの精神的負担を増大させます。診療の遅れが常態化すれば、スタッフの離職を引き起こす原因にもなるでしょう。
参考:令和5(2023)年受療行動調査(結果の概要)│厚生労働省
参考:待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査│日本医療マネジメント学会雑誌
皮膚科の待ち時間を削減する5つの対策
皮膚科の待ち時間対策として、以下の5つが効果的です。
- 時間帯予約の導入で診察時間を読みやすく
- 医療クラーク活用で医師の負担を軽減
- 自動精算機で会計待ちのストレスをゼロに
- LINE呼び出しで待ち時間のストレスを軽減
- クイック処方外来で診療フローを複線化
1.時間帯予約の導入で診察時間を読みやすく
診察順を来院順ではなく時間帯予約に切り替えることで、待ち時間や待たされる不満を減らせます。時間帯予約とは、「10:00~10:15」のように一定の時間枠で数人の患者予約を取り、運用する方法です。患者の来院時間を分散させ、特定の時間に来院が集中することを避けます。
来院順の受付は、ルールが単純で公平な一方で、患者にとっては時間が読めないことがストレスとなりがちです。
時間帯予約を導入することで、患者は診察時間に合わせて来院でき、待ち時間の低減につながります。また、「いつ呼ばれますか?」といった問合せが減り、スタッフの負担軽減にもなるでしょう。
関連記事:クリニックの時間帯予約とは?メリットや注意点、適した診療科を解説
2.医療クラーク活用で医師の負担を軽減
医師の業務負担を軽減することも、診療全体のスピードアップにつながります。特に有効なのが、医療クラーク(医師事務作業補助者)の活用です。医師が診察中に行っているカルテ入力や診断書作成などの事務作業を医療クラークが担います。
患者との対話や診察に集中できるため、診察時間を短縮しつつ、診察の質も高められるでしょう。
3.自動精算機で会計待ちのストレスをゼロに
診察後の「会計待ち」は、患者にとって特に不満がたまりやすい時間です。会計待ちの平均許容時間は10分で、診察時間の37分よりも短いことがわかっています。
会計待ちの時間を解消するために、自動精算機の導入が効果的です。患者自身が会計を行えるため、受付スタッフの業務負担も軽減できます。キャッシュレス決済に対応した自動精算機であれば、さらに会計がスムーズです。
会計業務が効率化されることで、受付スタッフは他の業務や、より丁寧な患者対応に時間を使えます。
参考:待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査│日本医療マネジメント学会雑誌
4.LINE呼び出しで待ち時間のストレスを軽減
LINEに連携した予約システムにより、待ち時間のストレス軽減につながります。診察順が近づくと、クリニックの公式LINEに通知が来るため、待ち時間を院外で過ごすことが可能となり、待ち時間を有効活用できます。
アプリやメールからも通知が可能な予約システムやツールもありますが、LINE連携がおすすめです。LINEは世代を問わず活用されているため、デジタルツールに抵抗を感じやすい高齢患者にも導入しやすいためです。
LINE連携により、単に待ち時間を短縮するだけでなく、待ち時間の「不快さ」を軽減することで、患者満足度は向上するでしょう。
関連記事:クリニック予約システムのLINE予約は便利?集患に役立つ理由とは
5.クイック処方外来で診療フローを複線化
クイック処方外来とは、症状が安定しており定期的な処方のみを希望する患者向けに、短い診察時間で予約できる診療枠です。皮膚科では、アトピー性皮膚炎やじんましんなどの慢性疾患が対象となります。
詳しい相談が必要な患者と、迅速に用事を済ませたい患者の動線を分けられ、双方の満足度を高められます。
皮膚科の待ち時間対策を成功に導く3つのポイント
皮膚科での待ち時間対策を成功させるポイントは以下の3つです。
- 自院のボトルネックを定量的に把握
- スタッフの負担にならないように配慮
- クレーム対応時のマニュアルを標準化
1.自院のボトルネックを定量的に把握する
適切な対策を講じるためには、まずは現状を正確に把握することが大切です。受付や診察待ち、会計待ちなど、患者がどのプロセスで時間を費やしているのかを計測し、自院のボトルネックを特定しましょう。
例えば、1週間などと期間を決めて定量的に計測し、平均許容時間と比較することで課題が明確になります。
感覚的に問題点を捉えるのではなく、定量的な証拠から課題を明らかにすることで、院内スタッフの納得も得やすくなるでしょう。
2.スタッフの負担にならないよう配慮する
改善を急ぐあまり、現場の意見を聞かずにトップダウンで新しいルールやシステムを押し付けると、スタッフは「やらされ仕事」と感じ、モチベーションが低下します。
また、新しい業務が増える一方で既存の業務が減らなければ、単に負担が増えるだけで、疲弊や離職につながるリスクもあります。
必ず現場のスタッフと十分に協議し、対策の必要性を示して納得感を得ながら進めることが重要です。
3.クレーム対応時のマニュアルを標準化
待ち時間に関するクレームは、スタッフにとって大きなストレスとなります。クレームが発生した際の対応手順を標準化し、スタッフ間で共有しておくことが重要です。具体的には以下の内容を定めておきましょう。
- クレーム発生時の初期対応(応答例、上長を呼ぶ基準)
- クレーム発生後の連絡と共有方法
- モンスターペイシェントへの対応と判断基準
スタッフ個人の判断に依存することなく、クリニックとして一貫した対応が可能になります。スタッフの心理的負担を軽減すると同時に、クレームを組織的な課題解決の機会として捉え、サービス改善につなげる体制を構築しましょう。
関連記事:病院の待ち時間が長いとクレームになる?時間削減とクレーム対策を解説
待ち時間対策には時間帯予約とLINE予約連携可能なMEDICALPASSを
皮膚科の待ち時間が長くなるのは、疾患や処置、診療報酬上の特徴が影響しています。どの皮膚科も直面しがちな課題ですが、裏を返せば待ち時間対策は他院との差別化につながるといえるでしょう。
自院のボトルネックとなっているプロセスを特定し、導入できそうなところから待ち時間対策に取り組んでみましょう。
株式会社ヒーローイノベーションでは、診療予約システム「MEDICALPASS」をご提供しています。LINE予約連携や時間帯予約の導入、リマインドなど機能が充実。さらにWeb問診や自動精算機も合わせて導入可能で、クリニック全体の業務効率化をサポートします。
待ち時間対策や業務効率化でお悩みなら、ぜひ一度ご相談ください。
著者PROFILE

- スマートクリニック事業推進室長
- 医療機器メーカー営業としてキャリアをスタートした後、医療ITベンチャーにて生活習慣病向けPHRサービスのプロダクトマーケティング責任者をはじめ、メルプWEB問診の事業責任者を経験。その後、診療予約システムやクリニック専用の自動精算機・自動釣銭機の商品の企画・開発を手がけ、現在は「医療を便利にわかりやすく」をミッションにスマートクリニックの社会実装に向け同事業の企画・推進を担当。
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